
研究と製造の両方に関われる工場技術職は、
まさに探していたエキスパート職でした。
大学院時代は、がん細胞に特異的に結合する分子の作製方法の確立を目指した研究をしていました。学術的なカテゴリーとしては生物と化学の両方にまたがる領域です。そんな私にとって、就職先としてまず考えられたのは食品・飲料業界と製薬業界でした。実際に就活では、当初は両方の業界にエントリーしています。就活を進めるうちに製薬業界にシフトしたのは、仕事を通じて多くの人の健康を支えたいという気持ちが大きかったからです。積水メディカルを志望した理由としては、海外に製品を出していることが大きかったですね。また、初めは研究職を志望していましたが、一方で現場により近い仕事を望んでいたこともあり、様々な業務領域を知ってからは、研究と製造の両方に関係する工場技術職に興味を持ちました。
様々なプロセスで試験を重ねることによって、
自信を持って出荷できる高い品質を確保します。
私の所属する品質管理課は、高品質な製品を製造するためのプロセスを管理する部署です。私は、最終製品の性能・品質が基準内となるように、各製造工程における検査を行っています。具体的には、原料の受け入れから、溶解、混合、分注などの操作を経る工程で検査を行います。こうした厳しいチェックが必要なのは、製造の全ての工程で設計通りの作業が行われたものだけが、性能が保証された製品として出荷できるシステムになっているからです。医療の現場で使用される検査薬には、高い精度が求められているのです。
特に複雑で重要なのは、生物由来の原料検査です。同じ原料を同じ原料メーカーに発注しても、ロット毎に微妙に特性が異なります。そこで原料の先行サンプルを原料メーカーから送ってもらい、自分たちがラボスケールで検査薬を試作し、適格と判断されたロットの原料だけを納入してもらいます。工場で実際に製品を作るときも、工程毎に一部を抜き取り、他成分との相互作用を起こしていないか吸光度計を用いて濃度測定を行ったり、電気泳動で夾雑物の混入や精製度をチェックしたりしています。最終製品の性能に影響が出てしまわないように工程毎にチェックをして、適正値に収まっていることを検証して、次の工程へと作業を進めるのです。


医療の最前線から寄せられる信用と信頼、
それが、つくば工場でつくっているものです。
私たちが担う業務は、高い品質で出荷するための品質管理だけではなく、顧客に納品した後の問い合わせ対応も含まれます。例えば、当社の検査薬を使用されたドクターや検査技師などのユーザーから、「想定外の検査結果が出たのだが、検査薬に問題があるのか、検査方法が間違っていたのか、検体の特性でそうなったのか、確かめてほしい」といったような質問が時おり届きます。そうした場合は、使用された検査薬を回収し、同一ロットから抜き出して保存してあった製品と比較試験を行います。使用された検査薬の品質や保存状態に問題が無ければ、測定方法をヒアリングしたり、検体をいただいて様々な分析をしたりして、異常値が出た原因を様々な角度から探っていきます。こうして、検査の異常値の理由を丁寧に調査し突き止めていくことで、医療最前線からの信頼を勝ち取っているのです。
任せてもらえる風土だから、
自分の仕事に意義と誇りが持てます。
私が入社した後で感じた当社のたいへん良い面は、仕事を担当者本人に任せるということです。そして、それは新人にも当てはまります。入社1年目の頃の先輩からの指導も、少しずつ本人に実際にさせてみるというものでした。おかげで、気がつけば一通りの仕事をできるようになっていました。新しい製品についても、手を上げて自分がやりたいと言えば、若手であっても任せてもらえます。私も新人研修が終わり、現場配属後すぐにPOCT製品(注)の試験を任せてもらえましたし、その後も遺伝子、免疫、生化学領域の試薬、標準品の試験など、着実に挑戦させてもらっています。多くの製品に触れることができる点や、検査薬の原理・性能や製造工程について広く深く学ぶことができる点にも大きなやりがいを感じています。その分、理解しなくてはいけないことも多く、責任も大きく、気が抜けません。しかし、それだからこそ、最終的に病院や検査機関が必要とする製品を届けること、患者さまに安全と安心を届けられることに誇りを持つことができるのです。
(注)POCTはPoint Of Care Testingの略称で、診察室やベッドサイドなど患者さんに近いところで行われる検査のこと。日本語では「臨床現場即時検査」と呼ばれることもある。POCT製品の例としては、インフルエンザウイルスキットなどが挙げられる。
