ストーリー

“検査”から医療の価値を最大化する

治療前から治療後のモニタリングまで。医療現場の検体検査は、悪性腫瘍や感染症、産科疾患などのさまざまな疾患において、早期発見や治療の経過観察などの重要な役割を果たしています。多くの人に、検査を通して適切な診断を受けてほしい、ベストな治療効果を享受してほしい。このような想いで、日々取り組みを進めています。

正確な治療方法を提供するために

医療に不可欠な臨床検査は、体内から採取した血液や尿などを調べる検体検査と、レントゲンや心電図など身体を直接調べる生理検査に分けられます。検体検査は、予防のための診断や、病態の診断、治療方針の選択、治療中の投薬効果測定や重症化防止、治療後のモニタリングなど、さまざまな場面で行われています。病態や疾患の原因は患者さんによって、それぞれ異なります。患者さん一人ひとりの状態を知り、最適な治療を選択するためには、検体検査が必要不可欠です。私たちは、検体検査の事業を通じて、医療機関のお客様に、自動分析機器や検査試薬をグローバルに提供しています。特に、血液凝固領域では、血液中の血液凝固因子やその分解産物を測定する機器や試薬の提供を通じて、お客様との信頼関係を構築し、本領域では20年以上、医療に貢献してきました。

血液凝固検査とは?

血液の検査は患者さんから採取した血液を用いて、臨床検査薬とどのような反応を示すかを測定することで、疾患や患者さんの状態を把握します。一般的に、血液内の赤血球や白血球などの量や形態を調べる血球検査と、血液中のタンパク質成分や活性を測定する血液凝固検査の二つに分かれます。積水メディカルが強みを持つ血液凝固検査は、血液中のタンパクの分解物や、固まる過程に働く物質の活性を測定する検査で、主に、血栓の有無や重篤度などを調べるために用いられます。その他にも手術前に血が止まらないなどの身体の状態を把握するためや治療薬のモニタリングのために本検査が使用されています。
中でもFDP、Dダイマーという血栓の生成を示すタンパクは、複雑な分子構成を持ち、測定が難しいとされてきました。さらに個人差や病態の変化により、広い濃度範囲を示します。これらは患者さんの状態や特徴を把握し、今後の治療方針を決める第一歩目の検査であるため、早く、正確に、結果が得られることが機器や試薬に求められます。
またPT、APTTといった血液の固まりやすさをコントロールするタンパクの働きを調べるには、患者さんの血管内の状態を試験管内で再現し、1秒、2秒単位の精度が求められる難しさと責任があります。

自動化で、医療現場の効率化と患者の検査の品質に貢献する

コアプレスタシリーズ
血液凝固自動分析装置 CP3000™

同じ患者さんでも測定のタイミングによって測定結果が変わってきます。体調や食事、他の薬の飲み合わせなども影響します。例えば、血液をサラサラにする薬を服用している患者さんが手術を受ける場合には、手術中に出血が止まらなくなることを防ぐために、どのタイミングで薬の服用を中止し、血液中の薬の量が下がっているか、確実に止血ができるようになっているかなどを判断するために検査を行います。そのため、検査には絶対の確実性が必要となります。常に検査する中できちんと安定した結果を提供し、どの病院で測っても同じ値が出て、正確に測れなければいけません。積水メディカルでは、約30年前から検査の自動化に機器メーカーと提携して取り組み、自動分析装置と検査で用いる試薬を製造してきました。最新の装置では1時間に400回測定することが可能となり、測定効率が圧倒的に向上するとともに、医療機関の方々の負担を軽減し、検査での正確性・安全性も格段に向上しました。販売開始から20年経った今も多くの医療現場で効率化と検査の品質向上に貢献しています。

カスタマーニーズに応え、新たな価値を創造する

血液凝固自動分析装置
S400CF

私たちが血液凝固の領域で強みを活かすことができたのは、以前から本領域でのノウハウや開発技術があっただけではありません。開発当時から、患者さんのためになるような、医療現場の方々が使いやすいような性能はなんだろうということを常に考え、徹底的に開発を行ってきました。技術だけを売るのではなく、患者さんや使い手にとっての価値を提供することを目指して、製品開発・改良を行ってきました。また、装置や試薬は医療機関に納入して仕事が終わるというものではなく、使っていただいてからが本番です。そのため、製品販売後のカスタマーサポートに注力し、疑問やご要望にお応えするために、日々研鑽を重ね、お問い合わせや相談に対応しています。例えば、患者さんが特殊な薬を飲んでいた場合や、別の病気にかかっている場合、正確な値が得られないなどさまざまな声がコールセンターや営業スタッフに届きます。
そのような場合、対処法を伝えるとともに、次世代の製品開発へのインプットを進めています。2020年からは、全社で新製品開発企画委員会を立ち上げ、血液凝固領域を含む全製品について、お客様のニーズや意見をもとに組織横断で、製品開発などにつなげる試みを進めています。

強みをさらに活かして、新たな価値へ

ラピッドピアⅡ

私たちが20年前に自動化した製品を発表して以来、血液凝固検査の領域は大きく進化してきました。現在では、より早く正確にはもちろんのこと、その先の価値を提供することが求められています。私たちは、これまで培ったノウハウを活かすため、さまざまな挑戦をしています。例えば、デジタルの視点を加え、測定したものをデータ化するだけでなく、それまで現場で手作業で行われるため負担が大きかった、検査の前提となるキャリブレーション、コントロール値などのデータ処理も一括で管理できるようにしました。検査そのものだけでなく検査の管理についても効率化し、医療現場の負担軽減に貢献しています。また、より簡単に結果が得られるよう、A4版一枚程度の機械で、血液をデバイスに滴下してセットすると結果が数字で出てくるという、簡便な卓上型の検出器を開業医向けに発売し、病院のベッドサイドから開業医まで、さまざまな医療施設でお使いいただいています。さらに、これまでの検査に加え、希少疾患についても検査ができるようにすることを目指し、アンメットメディカルニーズへの対応にも取り組みを進めています。

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